桜を接ぎ木する 盾芽接ぎの方法
これまで三度にわたり三種類の接ぎ木の方法を紹介してきたが、その中でも初心者向きなのが『芽接ぎ』と呼ばれる方法である。
落葉の前に行うため木の状態が分かりやすく、1~2週間で成否が分かり、たとえ失敗しても台木を枯らす恐れが少ないためだ。
『呼び接ぎ』も失敗が少なく初心者向きと言えるが、枝ぶりによって条件が限られてくるため気軽には行えない。
芽接ぎの中でも接ぎ方によって種類があり、初めてでも行いやすいのが削ぎ芽接ぎ。そしてより技術が必要になるのが盾芽接ぎ(楯芽接ぎとも呼ばれる)という方法である。
削ぎ芽接ぎは一昨年の失敗をふまえ、昨年に成功を収めることができたので、今年は新たに盾芽接ぎに挑戦してみた。
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盾芽接ぎについて
名称の由来は親木から切り取った接ぎ芽が盾の形に見えることから。
方法や手順は削ぎ芽接ぎとほぼ同じで、行う時期は8月から9月半ばにかけての間。
違いは台木側の加工の方法で、削ぎ芽接ぎが接ぎ芽と同じ形に削ぐのに対し、盾芽接ぎは樹皮をめくり、その下に芽を差し込む。
実際にやってみると、削ぎ芽接ぎでは台木と接ぎ芽を同じ形に削ぐのが理想なので、台木と親木の太さの差が大きい場合は盾芽接ぎの方が行いやすいと思う。
逆に台木が細い場合は樹皮をめくり辛いので削ぎ芽接ぎの方が行いやすい。
用意するもの
親木
増やしたい品種。正確にはその一枝、さらにはその中の一芽。
今年伸びたばかりで充実した芽を使う。枝の真ん中あたりの芽がよい。
台木
親木を接ぐ品種。親木と近縁の品種を選ぶ。
挿し木したり種から育てた苗を用意しておく。
庭植えでもいいが、芽接ぎでは生育期に作業を行うため、苗を動かせる鉢植えの方が作業しやすい。
ナイフ
切れ味のいい清潔な刃物。
接ぎ木用ナイフなども売っているが、今回使ったのはプラモデル製作にも使っているカッターナイフ。
接ぎ木テープ
結束用の伸縮性のあるテープ。
盾芽接ぎの方法
作業の前に今回行った盾芽接ぎの概要図を記しておく。
枝の断面は大雑把に分けると、外側から樹皮、形成層、木質部に分かれており、重要なのが新しい細胞を作っている形成層の部分。
接ぎ木ではここを活着させるのが目的となる。
作業の流れ
台木の接ぐ位置を決める
苗のなるべく地表に近い位置で、表面の起伏が少ない場所を選ぶ。
作業の邪魔になる枝や葉などは先に剪定しておく。
台木の表面に切れ目を入れる
幅は縦2センチ横1センチくらい。
今回行ったのはT字に切れ目を入れる方法。
十字に入れたり逆T字にする方法もある。
親木の芽を削ぎ取り接ぎ芽を作る
葉を葉柄を残して切り取り、芽の1センチくらい下に斜めに切れ込みを入れ、次に芽の1センチくらい上から刃を入れて削ぎ取る。
このとき台木の切れ目に収まるような大きさにする。
接ぎ芽の裏の木質部を剥がす
先に概要図で示したように、中心の木質部を取り除く。
個人的に調べたところによると剥がす、剥がさないと色々な記述があったが、今回は剥がしてみた。
接ぎ芽を台木に差し込む
台木に入れた切込みからナイフの先などを使って樹皮から形成層までの層をめくり、接ぎ芽を差し込む。
奥までしっかりと差し込み、切れ目からはみ出るようなら接ぎ芽の上部を切って調整する。
接ぎ木用テープで覆う
下から巻き上げてゆき、葉柄を出して上まで行ったら巻き下げて結束する。
芽ごと覆っても構わないが、その際には春に芽が動き出したときにテープを切って芽を外に出す。
活着までは芽が乾かないように直射日光を避ける。また雨や水やりの際に水が接ぎ口にかからないようにする。
活着したら1週間ほどで残しておいた葉柄がポロっととれる。
葉柄が繋がったまま黒く萎れたら失敗となる。
北東向きの軒下に鉢を置いてちょうど一週間後。葉柄はやや黒くなっていたが、触ってみるとポロリと落ちた。
約1カ月後
接ぎ口が癒合組織で膨らんできたのでテープを剥がしてみたところ、接ぎ芽の樹皮のすぐ下から形成されていた。
周りが盛り上がり埋もれるのではなく、芽自体が下から盛り上がっている。
芽が枯れていてはこうはならないはずなので、無事活着しているようだ。
その後の管理
今後は春を待ち、芽が動き出すのを待つ。
苗の種類を接いだ品種のみにしたい場合は接ぎ口の上で台木を切る。
芽が伸び出すと接ぎ口に負荷がかかり、接ぎ芽がはがれてしまう危険があるので支柱を添えてやる。
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