桜の挿し木データ 2017

発根、鉢上げした挿し木もすっかり根付き、成長も止まって休眠期を待つばかりとなった。
今年度はもうすることは特にないので、一度ここ数年間の挿し木の情報をまとめてみた。
発根した種類、使った道具、行った時期などの記録である。
なお我が家の場所は本州の太平洋側。桜前線が平年3月末ごろに到達する地域なので、時期を参考にする場合はその点を考慮して頂きたい。

 

今まで挿し木に成功したことのある桜の種類

桜は挿し木では増やしづらい部類に入るが、決して不可能なわけではない。
品種によって成功率にバラつきはあるものの、代表的な桜である染井吉野は比較的簡単に増やせるようだ。

染井吉野(ソメイヨシノ)

日本の桜の大半を占める代表的な栽培品種。単に桜と言えばこの品種を指すことが多い。
エドヒガンとオオシマザクラの交雑種。

大島桜(オオシマザクラ)

伊豆諸島に多く自生する野生種。染井吉野の父親にあたる品種。葉は桜餅に使われる。
ヤマザクラ群に属し、変異が多い。

枝垂桜(シダレザクラ)

枝が垂れ下がる桜全般を枝垂桜と呼ぶが、品種名でシダレザクラと言えばエドヒガン系のものを指す。
自分が育てているのは福島県三春町にある樹齢1000年以上のエドヒガン系ベニシダレザクラの「三春滝桜」の接ぎ木苗。

河津桜(カワヅザクラ)

1955年に静岡県河津町で発見された早咲きの桜。花の色が濃く、花期が長い。
オオシマザクラとカンヒザクラの種間雑種と考えられている。

 

成功経験がある鉢

プラスチック鉢

5号ぐらいの大きさのプラスチック製の普通鉢。
庭土を使って大島桜で薬剤不使用での成功経験あり。

テラコッタ

高温で焼かれた素焼き鉢。大きさは8号くらいだった。
庭土を使って枝垂桜で薬剤不使用での成功経験あり。

ピートポット

土に還るので鉢上げ時に鉢ごと植え付けられる。根がポットを破って出てくるので発根が直接目で確認できるのも便利。
庭土で大島桜、赤玉土で染井吉野、大島桜、枝垂桜、河津桜の成功経験あり。いずれも薬剤使用。

ペットボトル

500ミリペットボトルを輪切りにしてキャップに穴を空けたもの。
庭土を使って染井吉野で薬剤不使用での成功経験あり。

 

成功経験のある土

庭土

庭で掘り出した土(砂)。粒子が荒く通気性の良い土なら利用可能。

赤玉土(小粒)

火山灰土が粒状になったもので園芸の基本用土。
通気性、排水性、保水性、保肥性に優れる。

 

使ったことのある薬剤

薬剤を使用しなくても挿し木は可能だが、あった方が成功率は格段に上がる。両方合わせて使うと発根し辛いと言われる桜でもかなり高い確率で成功する。

ルートン

発根促進剤。挿す前に根元に付けると発根しやすくなる。

メネデール

植物活力素。水揚げ時に使う。植物の成長を助け、根の発生を促す効果がある。

 

挿し木した時期と発根までの期間

発根確認の時期は根が視認できたタイミングを載せている。

染井吉野

5月初旬と中旬 ⇒ ともに7月に入ってすぐ発根確認

大島桜

6月中旬に挿す ⇒ 7月中旬に発根確認

枝垂桜

6月中旬に挿す ⇒ 7月下旬に発根確認

河津桜

6月初旬に挿す ⇒ 8月初旬に発根確認

 

それぞれの条件

発根した際の条件の一例を紹介する。

染井吉野

ペットボトルに庭土。薬剤は不使用。
室内の北東向きの出窓に置いて管理。

ピートポットに赤玉土。メネデールで水揚げし、ルートンを使って挿す。
室外で朝だけ陽の当たる北東向きの軒下で管理。

大島桜

ピートポットに庭土、赤玉土。ともにルートンを使って挿す。
室外で朝だけ陽の当たる北東向きの軒下で管理。

枝垂桜

ピートポットに赤玉土。メネデールに数分浸けてから挿す。
室外で直射日光の当たらない明るい日陰で管理。

河津桜

ピートポットに赤玉土。メネデールで水揚げし、ルートンを使って挿す。
室外で朝だけ陽の当たる北東向きの軒下で管理。

 

挿し木を成功させるために

個人的な考えだが、成功のコツは2つ。
発根まで挿し穂を枯らさないための水分の管理。
そして発根しやすくするための注力。
とにかく挿し穂を枯らさないことが第一なので、蒸散量と給水量のバランスには気を付けること。
日照や通気、温度に、鉢の素材や土の種類にも左右されるので、バランスの取れた環境をまず見つけることが重要となる。
枯らさないように管理してさえいれば、いずれは枝が持っている力が新たに根を伸ばし始めるかもしれない。
あとはその力をどこまで引き出せるかが勝負となる。
挿し穂を作るときに充実した枝を選ぶことも重要だが、薬剤を使ったり根を張りやすい環境を用意してやることで、成功率はぐっと上がる。