肥料について ~寒肥と方法

桜に与える肥料について

 

 桜の樹は冬の間は休眠期である。

一部の桜は冬でも咲いているが、大抵の種類は葉を落とし、春の温度になるのを待っている時期である。

休眠中に行う作業は剪定と施肥。鉢植えであれば植え替えなどの時期でもある。

今回は冬に施す肥料――寒肥(かんごえ・かんぴ)について。

 

 

自然界において肥料は施されずとも、樹木は育ち花は咲く。

落ち葉や下草が微生物によって分解され腐葉土となり、豊かな土壌を作り出す。

花が咲いて実が生れば虫や鳥が集まる。死骸や糞も落とすだろう。

それらが土壌に必要な栄養素を供給し、また樹は育つ。

よく出来たものである。

しかし庭木ではそうはいかない。

落ち葉や雑草は綺麗に片づけられてしまい土には還らない。

虫は益虫も害虫もまとめて嫌われ、実は摘果か収穫によって回収され鳥も寄り付かない。

これでは必要な栄養素は樹に吸い上げられたきりである。

そこで庭木では、人間が必要に応じて環境を整えてやらねばならない。

その一つが肥料による栄養素の補給である。

特に桜は肥沃な土壌を好む樹なので、花を楽しみ樹を健康に育てるには肥料の管理が重要になる。

 

 目に見えて桜が活動を始めるのは春の芽吹きからだが、実際にはそれより一か月ほど前には根が活動を開始している。

地方にもよるだろうが、大体2月の中旬ごろから3月上旬あたりになる。

この活動開始から枝葉が一通り伸びきる7月ごろにかけてが、桜にとって一番肥料が必要な時期と考えてもいいだろう。

そこで冬の間に施しておくのが寒肥である。

効き目がゆっくりと現れる緩効性の肥料を、根の活動開始を見計らって施す。

肥料が効き始めるには時間がかかるので、時期は1月下旬から2月上旬あたり。

ただし植え付けや植え替えをした直後の樹は根が傷んでいるので、肥料を施すのは根が定着してからになる。

植え付けから2年目以降の庭植えの桜の場合。

理想的なのは枝が広がっている範囲全体にまんべんなく施すことだが、それだけの範囲を数十センチ掘り起こすのには大変な労力がかかる。

部分的に施す場合は樹の周りに十か所ほど穴を掘り、そこへ肥料を埋める。

または根の活動が一番活発な先端部分を狙って溝を掘る。

根の広がっている範囲は大体枝葉の広がっている範囲と同じなので、樹冠の先端当たりに溝を掘り、そこへ施す。

他にも溝を断続的に掘ったり、放射状に掘ったりする方法がある。

溝の深さは二十センチほど。

桜の根は浅く広く張る性質があるので、あまり深く掘る必要はないが、浅すぎると肥料を求めて根が地上に出てきてしまう。

また溝を掘った時に石などが出てきたら、根の障害になるので取り除いておく。

土が粘土質だったり砂地だったり、土壌が保肥力に乏しい場合。腐葉土などを混ぜ込んでおくとより効果があるだろう。

 

長くなったので、成分や量については後述する。