鉢植えの桜の鉢上げ

鉢上げとは

鉢上げとは要するに小苗を一回り大きな鉢に植え替えることである。

苗を大きく健康に育てるには根をしっかりと育ててやることが重要だが、そのためには徐々に鉢を大きくすることが必要となる。

苗を大きくしたいからといっていきなり大きな鉢に植えると、根は鉢の壁に当たるまでひたすら伸び続けるので、太く長くなる。そして壁に沿って根を張りだす。これでは中心部にはほとんど根がない状態になってしまう。

肥料や水分を吸収するのは先端の細い根なので、根を育てるというのは細根を増やすことである。

つまり根がほどよく張ってから鉢を大きくした方が、根を育てるには良いということだ。

また鉢が大きすぎると鉢内が乾きづらくなり、根腐れを起こしやすくなることも考えられる。

 

 

鉢上げ・植え替えのサイン

植え替えるタイミングの目安には次のような状態がある。

● 鉢に対して大きくなりすぎた

● 水がなかなかしみ込まなくなった

● 水やりをしてもすぐに乾く

● 生育期(5~9月の葉や茎が伸びる時期)に芽が伸びない

● 葉が枯れたり、変色する。

いずれも鉢土の劣化や根詰まり、根腐れなどが原因で起こる症状である。

ただし肥料過多や、逆に肥料不足など、他の要素が重なって起きる場合も多いので一概には言えない。あくまで目安である。

 

 

植え替えの時期

桜(落葉樹)の植え替えの時期は、根へのダメージが最小限で済む休眠期が適期である。

冬の間の落葉期、中でも厳冬期を避けた12月と2~3月が最適となる。

早咲きの品種は12月に、それ以外の品種は2~3月に行うと良い。

(ただし東北地方以北の寒冷地では寒さに合わせて時期をずらすことになる)

 

しかし先に触れたように植え替えをしないほうが悪影響が出る場合などは、苗の回復を図るために生育期に植え替えをする場合もある。

また育苗用のポットや育苗箱で育てた実生苗や挿し木など、根付くまで一時的に植えていた場所から移動させる際にも生育期に植え替えることがある。

 

 

鉢上げの方法

写真の苗は2016年に成功したエドヒガン系紅枝垂桜の挿し木苗である。

背が高く、不安定になってきたのと、梢の伸長が鈍ってきたので今回鉢上げすることにした。

用土の用意

赤玉土6~7に対して腐葉土4~3の割合で混ぜたものが鉢植えの基本用土。

バケツなどの容器に軽い方の用土から入れ、赤玉土を砕かないようにやさしく混ぜる。

用土を混ぜたところ

 

苗を鉢から抜く

乾燥によって根を痛めないように日陰や曇りの日に行う。

根が回っていると簡単に抜ける。

植え替えの際には古土を軽く落として根鉢をほぐすが、幼苗の場合は根鉢をなるべく崩さず、根を痛めないようにする。

苗を抜いて、土を少し落としたところ

 

鉢に用土を少し入れる

元の鉢より一回り大きい鉢を用意し、鉢底石や大粒赤玉土などを入れ水はけを図り、混ぜておいた用土を少し入れる。

今回は5号鉢から6号鉢へ鉢上げした。使用したのは大粒の赤玉土。

鉢底に大粒赤玉土を敷いたところ

 

苗を植え付ける

苗を置いて深さを調整しつつ、用土を詰めていく。

隙間が出来ないように棒などで突き込んで、根の間に土が行き渡るようにする。

苗を入れたところ

 

水を与える

作業が終わったら水を鉢底から流れ出すまでたっぷりと与える。

水をやったところ

 

 

その後の管理

植え替えた直後は根が十分に水を吸わないため、直射日光で苗を痛めないように半日陰に置き、過湿にならないよう水は控えめにする。

また肥料も根を痛めるので控える。

根が落ち着くまで1~2週間は半日陰に置き、その後植物に合った日当りの場所に移動させる。

 

 

 

本来は落葉期に植え替えるのは上記の通り。

葉が茂っている生育期の植え替えでは、根を痛めることで水分の吸収が滞り、結果的に苗が枯れる可能性があるので極力避ける。

それでも行わないといけない時には、蒸散量を減らすために葉を減らすなど、水分管理に十分気を付ける必要がある。

今回の苗は植え替える少し前に長枝を切り詰めてあったので、多分大丈夫だろうと感覚的に判断して実行した。

基本的に幼い苗は枯れやすいが回復力は高く、

成木は枯れづらいが回復力は低い傾向にある。

実生苗や挿し木苗は安心して冬を越すために、秋までになるべく丈夫な苗に育てたいので、慎重かつ積極的に鉢上げをしていこう。

一度根付いた苗ならば、根さえ痛めなければ割としぶとく生き残ってくれるものである。