桜を挿し木で増やす 緑枝挿しの方法

桜の木の増やし方

特定の種類の樹木を増やしたい場合。最も気軽に行うことが出来るのが挿し木による無性繁殖でクローンを作ることである。

簡単に言うと木から枝を切り取り土に挿しておくと、その枝から根が生え、新たに成長を始める。そうして出来た苗は切り離した木とまったく同じ遺伝子を持つことになる。

特に桜は種から同じ品種を育てることがほぼ不可能なので、増やしたい時には挿し木や接ぎ木(夏には芽接ぎ、春には切り接ぎ)でクローンを作ることが一般的である。

桜の挿し木の時期は3月上旬に芽が伸びる前の枝を挿す、休眠枝挿し、または春挿しと呼ばれる方法と、

梅雨の最中に葉の付いた枝を挿す、梅雨挿し、または緑枝挿しという方法がある。

春挿しについては以前紹介したので、今回は緑枝挿しを紹介する。

→春挿しの紹介記事へ

 

緑枝挿しの可能な時期について

緑枝挿しはまたの名を梅雨挿しと言い、その名の通り梅雨の時期に行われる挿し木である。

かと言って梅雨時にしかできないというわけではない。

梅雨時が桜の挿し木に適しているのは春に芽吹いた枝葉の成長が一段落し、充実期に入ること。多くの温帯植物の生育に適した気温(1525℃)である事。湿度が高いので切り離した枝葉が萎れにくいことが挙げられる。

逆に言えば、これらの条件を満たせば梅雨時でなくても桜の挿し木は可能というわけだ。

つまり、成長が止まり芽が固まった枝を選び、水分の管理を適切に行えば、花が終わった直後の5月ごろでも桜の挿し木は可能である。

これは理論上の話ではなく、自分は実際に成功したことがある。

まだ桜や挿し木の知識などろくにない頃。花の終わったあとの大島桜を気まぐれに挿してみた。

普通のプラスチック鉢に庭土を入れ、発根促進剤なども使わず、水揚げもろくにしないまま、それでもうろ覚えの知識で葉と先端の切り戻しだけは行い、後はひたすら水をやっていたら、数か月後。芽が成長を始めたのである。

残念ながらその株は知識不足から管理に失敗し、枯らせてしまった。

その後は園芸や桜について学び、今も試行錯誤を繰り返しながら桜を育て続けている。

  

緑枝挿しの方法

では梅雨まで待てないせっかちな人のため、緑枝挿しの方法を紹介しよう。

挿す時期

春は比較的雨が多い季節なので、緑枝挿しも不可能ではない。

狙い目は新芽がある程度固まる頃の卯の花梅雨。5月から6月に降る季節の変わり目の長雨だ。

もちろん梅雨に挿し木しても良い

用意するもの

用土

小粒の赤玉土や、鹿沼土、川砂、パーライト、バーミキュライトなど。

挿し木用に配合された培養土なども売っている。

重要なのは水はけと保水力のバランスが良く、清潔で肥料分のないものを使うこと。

成功した経験があるので、上の条件に当てはまれば庭土でも出来る。

通気性の良いものが良いが、わりとなんででも出来る。

素焼きの鉢や育苗用のポット。発泡スチロールやペットボトルに水抜き穴を空けたものなど。

ペットボトルを使った挿し木はこちらを参照

自分は成功した後の植え替え時に根を痛めないで済む、ピートポットを愛用している。 

桜の枝

春からの成長が止まり、芽が固まっている枝。

葉の色が黄緑ではなく濃い緑色になっていて、枝に芯があるもの。

枝の色がまだ緑色で、太さが3~4ミリ位のものが発根しやすい。

枝を採取するときは根元から生えているものを避ける。桜は接ぎ木で増やすことが多いので、根元の枝は別の種類の枝の可能性があるためである。

桜 挿し木に向いている枝

写真のように幹から直接生えている『胴吹き枝』は切り取っても木への影響が少なく、挿し木に向いている

桜 挿し木に使う枝

伸びたばかりの柔らかい部分は挿し木に使えない(写真の青線の部分)

葉は3~4分の1くらいにカットする

発根促進剤

『メネデール』や『ルートン』などの成長促進剤や発根促進剤。

使わなくても成功したことがあるが、あった方が成功率は上がる。

特に桜は挿し木での発根率が低いので、少しでも確率を上げたいなら用意しよう。

 

挿し木のやり方

挿し穂の準備

桜の枝を3~5芽ごとに切り分け、上から1~2枚の葉を残して残りを切り取る。

葉からの蒸散による水分の消費を抑えるため、葉を3~4分の1ほどの大きさに切る。

水を吸う面積を増やすため、根元の方を斜めに切り戻す。清潔で切れ味のよい刃物を使うこと。

準備が出来たら水を入れた容器に根元を浸け、水揚げをする。切り離して間もない枝なら数分でよい。乾燥気味なら30分~1時間ほど浸けておく。

枝を切り離してから水揚げまでを素早く行い、挿し穂を乾燥させないようにするのがポイントである。

挿し木の方法

切り分けるときは芽の2~3ミリ上で切る

葉は1~2枚に調整する

先端は鋭角にカットし、ささくれないように鈍角に切り戻す

挿し床に挿す

 用意した鉢に用土を入れ、湿らせておく。

挿す際に断面が傷まないように、棒であらかじめ穴を空ける。穴は少し斜めにする。深さは挿し穂の長さの半分ほど。

発根促進剤を使う場合は、挿す前に挿し穂の基部に説明書に従って薬剤を付ける。

空けた穴に沿って斜めに挿し穂を埋め、指で土を軽く抑えて固定する。

挿し終わったらたっぷりと水を与える。

桜の挿し木

挿し穂の半分ほどの深さに斜めに挿す

ぐらつかないように土を落ち着かせる

挿し木の管理

挿し木した鉢は軒下などの明るい日陰か、建物の東側など午前中だけ日が当たるような半日陰、寒冷紗などで遮光した場所などに置いて管理する。

挿し木後3日ほどは毎日たっぷりと水をやる。徐々に少なめにするが、決して乾燥させないように注意する。

肥料などは発根が確認できるまでは施さない。

発根までは1~2カ月はかかる。その間に葉が萎れてしまったら失敗である。また害虫に葉が食べられてしまうこともあるので注意する。

挿し木の鉢上げ

発根が確認できるか、新芽が伸び出したら、苗の大きさに合わせた大きさの鉢に植え替える。(挿し木の発根後の管理参照)

最初から大きな鉢に挿していた場合はそのまま育てても良い。

ピートポットの場合。根が直接目で確認できるので鉢上げのタイミングがわかりやすい。

鉢上げもそのまま土に埋めるだけなので、根へのダメージが無く、その後の成長も早い。

桜 発根した挿し木

根が鉢を破って出てくるので、そのまま鉢に埋める


桜 挿し木の鉢上げ

終わりに

適切に管理しても桜の発根率は決して高くないので、数多く挿し木をして1つ成功すれば運がいいぐらいに思っておこう。

また、新芽が伸び出した時にも害虫に注意が必要となる。葉が少ない分大きなダメージになるので、水分の管理なども含め、日頃の観察が大切である。

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