桜の接ぎ木 呼び接ぎの切り離し

以前紹介した接ぎ木の方法の1つである呼び接ぎだが、他の方法と違い活着後には切り離す作業が必要となる。
呼び接ぎを行ったのは3月下旬だったが、その際は数パターンの組み合わせを試した。
そして8月初旬。該当記事で紹介した苗とは別になるが、今回その中の1つを切り離すことにしたので、その際に行った方法を紹介する。

今回の苗について

穂木は2年前に緑枝挿しした染井吉野の挿し木苗を庭に植えておいたもの。
台木は『台木の用意 種蒔き』及び『桜の実生苗の鉢上げ』の記事で紹介した大島桜の実生苗5本のうちの1つ。
接ぎ木の方法は『呼び接ぎの方法』で紹介した時と同じく、表皮を削り形成層を合わせテープで結束しておいただけである。


 

活着の判断

今回は苗の成長に伴い接ぎ木テープが裂けてきたことと、隙間から見える接ぎ口が綺麗に繋がっていたこと。そして台木となる鉢植えが猛暑にもかかわらず萎れずにいたことから、地植えの穂木側と十分に水分のやり取りが出来ていると判断した。

呼び接ぎ 活着後

今回は実験的な意味もあり切り離したが、本来ならしっかり活着したと確信が持てるまで、あせらずなるべく長期間おいた方がよい。
とくに夏は水分の消費が多く、折角の苗が萎れてしまう危険があるので避けた方が無難である。

実際の作業

作業に入る前に切り離す際の負担がかかるのを緩和するため、接ぎ口の上を接ぎ木テープで結束し補強しておいた。また、台木と穂木の上部は折れてしまわないように活着前から麻ひもで結んである。


まずは接ぎ口から離れた位置で穂木の枝を切り離し、後に余った枝を接ぎ口の下で切る。この時、目標の位置から少し離して切り、残りはナイフで削りつつ表面を整えた。
切った角度は経験によるカンである。

穂木の種類だけにしたい場合はさらに台木の枝を接ぎ口の上で切るが、今回は両方の種類を残したいのでそのままにしておいた。

穂木の切り離し

切り口を保護するため、殺菌癒合材のトップジンMペーストを接ぎ口まで覆うように多めにたっぷりと塗っておいた。

切り口の保護

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活着しているとはいえ水分の供給バランスが大きく崩れるので、直射日光を避けるため半日陰に置いて様子を見ることにした。
鉢が倒れるのを防ぐため地面に支柱を斜めに挿し、麻ひもで苗と結んでおいた。


二週間後

穂木の成長

葉がいくつか落ちたものの萎れずにいる。また穂木の新芽が伸び出したので無事に切り離しは成功したようだ。

切り口のカルス


切り口もカルス(癒傷組織。植物にとってのかさぶたのようなもの)が周囲に均等に形成され始めたので、大きく成長すれば綺麗に塞がると思われる。


今後は日光に慣らしつつ肥料を与え、冬に備えて樹に力を蓄えさせてゆく。
枝の量が増えたので今冬には鉢上げを行い根を育て、より太く大きくなるよう管理していきたい。