桜を取り木で増やす 盛り土法
数カ月前のこと。
畑に植えてあるさくらんぼの樹の根元からひこばえが生えていた。
ひこばえとは樹木の根元から伸びる小枝で、主幹の勢いをそぐので小さいうちに剪定するのが基本である。
なので付け根から切ってしまおうと、埋まっていた根元を軽く掘ってみたのだが――
その小枝からは主幹の根とは別に、新たな根が生えていたのである。
別に増やす予定もないし、そもそも台木の枝の可能性もあったので、その枝は剪定してしまった。
しかし根は十分に出ていたので、傷つけないよう切り取って別の場所に植えてやれば簡単に別の苗が出来ていただろう。
さくらんぼといえば言わずもがな桜の仲間であり、接ぎ木で増やす際の台木には桜と同じくマザクラが使われることが多いという。
ならば桜でも同じように出来ると考えるのは自然であろう。
長くなってしまったが、今回は上記をきっかけにして行った取り木、盛り土法の実験結果を紹介する。
取り木とは
そもそも取り木とは何かと言うと、増やしたい木の枝の途中から根を出させ、のちに切り離すことで新たな苗を得る方法である。
根が出てから切り離すので失敗が少なく、成木の形の良い枝を選んで行えば、初めから大きくて形の良い苗を得ることが出来る。
他にも挿し木で発根し辛い植物でも増やせる可能性が高い、接ぎ木より丈夫な苗を作れるなどの利点がある。
ただし切り離せるまで発根させるには時間がかかり、挿し木や接ぎ木と比べて数を多く増やせないという欠点がある。
挿し木で簡単に発根する種類では行う意味があまりなく、発根し辛く挿し穂を得ることが難しい貴重な植物などを増やす場合などに向いている。
盛り土法とは
今回紹介する盛り土法は、根元に土を盛って発根させる方法である。
根を出させたい場所にただ土を被せておくだけなので簡単に行える。
ただし根元に枝が必要となるので、背の高い樹で行うには条件が限られてくる。
歳月を重ねた桜であれば地際にひこばえが生えることはよくあるので、増やしたい種類の樹でそれを見つけることが最大の条件となる。
ただ土を盛るだけなので失敗しても樹への影響はないし、成功して切り離しても元々不要な枝なので切った方が良いものである。
実際の方法
今回取り木を試したのは庭にある四季桜。
春だけでなく秋にも花が咲く、毎年必ず返り咲きをする品種である。
地面に近い位置に枝があったので、ここに土を盛ることにした。

庭土を掘って枝の根元が十分隠れるように土を盛る。

方法としてはこれだけである。
あとは根が出るのを待つだけで、基本何もする必要はない。
ただし雨が長く降らなかったり、日光が強くあたったりして土が乾燥してきたら水をかけてやる。
結果
3カ月後。
試しに根元を掘ってみたところ、とりあえず1本根が出ているのを確認した。

他にも細かい根が見えているが、おそらくこれは主幹から出ている根と思われる。
掘り返した範囲では1本しか見えないが、あまり無理に掘るとせっかく出た根を傷付ける恐れがあるので、確認はほどほどにして埋め戻しておいた。
根が出ても1本くらいでは切り離さず、かなりの本数が出るまで待つことが重要である。
今回は行っていないが、根元に針金をきつく巻き付けたり、樹皮を剥いだりしておくと発根しやすくなる。
さらに挿し木で使うような発根促進剤を付けておけばさらに発根しやすくなるだろう。
今後、根が十分に出たら切り離すわけだが、その適期は落葉後となる。
時期について
今回行った時期は5月下旬。
手持ちの本には盛り土法の適期が書いてなかったので早いうちに行っておいた。
実は1カ月前にも試しに掘り返してみたのだが、その時には根は出ていなかったので、ここ1カ月の間に発根したことになる。
このことから桜の盛り土法の適期は、緑枝挿しや他の取り木と同じく6~7月が適期と思われる。
今後は根が増えるのを待って切り離すわけだが、場合によっては1~2年は待つことになるかもしれない。
その時にはまた改めて紹介するので、続報はしばしお待ちいただきたい。
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