桜の実生苗 その後

桜 実生苗

長らく続報をお伝えしていなくて申し訳ない。

桜の新品種の選出を目指して、種から育てている実生苗の途中経過を報告する。
苗はと言えば枝葉の成長も止まり、徐々に紅葉を始めている。
こうなると活動も緩やかになり、あとは休眠期となる冬を待つばかりとなる。

2016年度の種で芽吹いたものは浮遊選別した7つのうち7つ。(種蒔きの方法はこちら
発芽率は100%だったが、発芽後にやった液体肥料で根を痛めたのか、最初に発芽したものから数えて3本までは枯れてしまった。
残りの4~7本目までは順調に生育し、いずれも高さは1メートルを超えた。
また、2015年度の種から育てた苗は枝垂れる形質が強く、支柱を立てないとまっすぐ伸びなかったが、2016年度の種は真っ直ぐと伸びている。

桜の実生苗

高さは高いもので130㎝ほど。

桜の実生苗

太さは1センチ強。
どんな品種になったのか花が咲くまでは判別できないが、現時点で分かる範囲の特徴を紹介する。

葉の各部の名称

特徴を紹介する前に、各部の名称を覚えておいてもらいたい。

桜の葉 各部の名称

① 葉身(ようしん) 葉の本体。
② 葉柄(ようへい) 葉身と枝を繋ぐ部分。
③ 蜜腺(みつせん) 葉にある花蜜を分泌する器官。花外蜜腺。桜の特徴でもあり、普通葉に2つある。
④ 鋸歯(きょし) 葉や萼の周囲にある細かい切れ込み。桜の葉には普通鋸歯がある。

 

まずは母親(種を採取した品種)となるエドヒガン系シダレザクラの特徴。

葉の形状は細長く、蜜腺が葉身につく。葉柄は有毛で鋸歯は低い。

エドヒガン系シダレザクラ 葉
エドヒガン系シダレザクラ
エドヒガン系シダレザクラ 鋸歯
エドヒガン系シダレザクラ 鋸歯

次に父親(花粉を採取した品種)となるオオシマザクラの特徴。
葉は大きく楕円形。蜜腺は葉柄につく。葉柄は無毛で鋸歯は先端が長い。

オオシマザクラ 葉
オオシマザクラ
オオシマザクラ 鋸歯
オオシマザクラ 鋸歯

2016年度の種
葉の絶対数が少ないので何とも言い難いが、楕円か卵型? 少なくともエドヒガン系とは大きく異なる。
蜜腺が葉柄につく。葉柄は有毛。鋸歯は明瞭。(ちなみ蜜腺は2つ付いていたが、撮影時に1つ欠けてしまった)

桜の実生苗 葉
2016年度の実生苗
桜の実生苗 鋸歯
2016年度の実生苗 鋸歯

 

以上のように、明らかに母親と異なる葉を持ち、オオシマザクラに近いものの有毛である。
葉の特徴だけなら両親よりも、理想とするソメイヨシノに近いと言えなくもない。
言い切るには皮算用が過ぎるが、開花への期待は高まるというもの。
引き続き大事に育てて、開花を楽しみに待つことにする。