桜 染井吉野について

染井吉野の基礎知識

日本で桜と言えば、真っ先に思い浮かべるのはソメイヨシノ(染井吉野)である。

葉よりも先に花だけが咲き、花自体も大型で見栄えが良い。

それに樹の成長も早く、積極的に植えられてきたこともあり、今では最も一般的な桜になった。

ただし、あまりにも集中的に植えられてきたせいで、様々な問題を抱えてしまっている。

密に植えられたことにより枝同士が込み合い、日照不足や風通しの悪さを招く。

光と風は虫封じという言葉があるが、同じ品種が固まっていることで、一度病害虫が蔓延ると大量発生から一気に枯れこむ可能性もある。

また地面が踏み固められることによる踏害。舗装による根の呼吸不全。車の排気ガス。

節操なく植えられたことによる桜への悪条件は枚挙に暇がない。

そして桜という樹自体、傷口や切口から痛みやすい性質がある。

ソメイヨシノはこれらの条件が重なり、桜の中でも特に短命な種となってしまっている。

ただしこれは生育条件などを含めた話で、ソメイヨシノの種自体の寿命は未だ不明である。

なぜならソメイヨシノが世に出たのは江戸末期から明治初期ごろと言われていて、誕生から日が浅いため古い樹自体が存在しないのである。

現存する最古のソメイヨシノは青森県弘前市の弘前城にある1882年に植えられたもの。

弘前では名産のリンゴの樹の管理技術を桜に応用し、手厚く管理されている。

樹木の寿命は環境による要因が大きいので、適切に管理すればソメイヨシノも数百年と生きることが出来るのかもしれない。

 

染井吉野の起源

そもそもソメイヨシノは交配によって生まれた種である。

親はいずれも日本に自生する桜で、

エドヒガン(江戸彼岸)

白~紅色のやや小ぶりな花を咲かせる。花の後から葉が伸びる。

樹齢千年を超す老木が何本もある長寿な桜。

オオシマザクラ(大島桜)

白い大きな花を咲かせる。花と同時に緑の新芽が伸びる。

葉は大きく香りがあり、桜餅に使われているのはこの種類。

 

近年の研究で交雑割合がエドヒガン47% オオシマザクラ37% ヤマザクラ11% その他5%ということがわかったらしい。

エドヒガンを母親に、オオシマザクラとヤマザクラの種間雑種を父親に持つという。

 

そしてここからが本題。

我が家には桜が何本か植わっていて、その中にはエドヒガン系ベニシダレザクラとオオシマザクラがあった。

ベニシダレザクラは樹齢1000年以上と言われる『三春滝桜』の接ぎ木苗。つまりまったく同じ遺伝子を持つクローンである。

オオシマザクラの方は今は亡き祖父が他の樹の授粉用に買ってきたらしいが、詳しい出自は不明である。

せっかく二系統の桜が手元にあるのだから、この二本からソメイヨシノに似ていて、なおかつ長命な遺伝子を持つ品種を作り出せないか。

その思いがきっかけとなり、桜を種から育てる計画が始まったのである。